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新人グラビア☆アイドルファンド

㈱ジャパン・デジタル・コンテンツ(JDC)は、「新人グラビア☆アイドルファンド」を開発した(取り扱いはジェット証券㈱)。このファンドは、5人のグラビアアイドルをオーディションで選定し、彼女らが出演する写真集やDVDを製作するプロジェクトの資金を匿名組合方式のファンドで調達するというものである。このプロジェクトは実際には5人別々となっていて、それぞれのアイドルについて「○○支援プロジェクト」がある。投資家は、そのうちどの支援プロジェクトを選んで(つまりどのアイドルがいいかを選んで)投資する。1口5万円だが複数口購入できるので、全員を応援してもよい。契約上、最大で60%のキャピタルロスが生じるが、原理上リターンの上限はない。累計売り上げ7936セットで損益分岐点とのこと。

このファンドをリアルオプションの観点からみるとき、注目すべき点は2つある。1つは、各アイドルの支援プロジェクト自体が、明確な段階的投資の構造を持つことである。約2年間の投資期間の中で、最大4回の写真集・DVDが計画されているが、各段階のDVDの売上枚数及び写真集の売上冊数が所定の足切り基準に達しない場合、次段階以降の製作は行わないこととなっている。すなわち、JDCは最初の1回を除いた3回の中止オプションを持っていることになる。

2つめの点は、このファンドが組成上明確に金銭的リターン以外の「精神的満足」を掲げていることである。ファイナンスの世界では、貨幣で計測できない価値はカウントされない。しかしたとえば、企業が資金の使い道を考えるとき、他の企業に投資するのではなく自社の事業に投資するのはなぜだろうか。個人投資家が、充分な分散投資ができず理論上不利とわかっていながら、自ら投資先を選ぶのはなぜだろうか。それらの中には、「この事業が好き」や「この会社を応援したい」といった動機もあるのではないか。少なくとも、このファンドの場合、購入者の大半はアイドルのファンであり、応援したいという気持ちを持っているであろう。それは、ケインズの「株式市場=美人投票」論とはちがった世界である。そしてそうした思い入れこそがこのプロジェクトに内包されるリアルオプションの根源である。1口5万円という商品設計は、その意味でも有意義ではなかろうか。

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