« 13歳のハローワーク | Main | サーチファンド »

ミュージックファンド

ヒット曲ランキングなどで有名なオリコン㈱等が出資する㈱ライツバンクは、音楽著作権のファンド「ミュージックファンド」を発売している。第1号ファンドは、元オフコースのメンバー3名(清水仁、松尾一彦、大間ジロー)が結成したバンド「A.B.C.(アコースティック・ビートルズ・クラブ)」のセカンドアルバム「A.B.C. Vol. 2」を対象としたもので、制作費200万円を1口2万円×100口に分割し、2003年9月24日~10月24日の間募集され、完売した。期間はCD発売から1年間である。

スキームとしては一般的な匿名組合方式であり、キャッシュフローはアーティスト、営業者(ライツバンク)、および投資家の間で分配される。分配スキームの詳細は説明書を参照いただきたい。スキーム図を描いてみると、アーティストの取り分は一般的なコールオプション型、ライツバンクの取り分はフロア付き(定額の手数料および販売量に応じた手数料)のコールオプション型(経費差し引き後のキャッシュフローの一定割合を成功報酬として受け取る)であるのに対し、投資家の取り分は、投資資金回収までは若干優先的にキャッシュフローの配分を受けるが、その後分配比率が若干下がってアーティストと同じ比率になるショートプット型に近いペイオフスキームとなっている。販売枚数が少なければアーティストの取り分はライツバンクの取り分を下回るが、販売量が増えればやがて追い越すこととなる。アーティスト、ライツバンク、投資家についてリターンは理論上無制限であり、売上が増えればリターンも増える構造である。

本ファンドは、基本的には著作権の流動化スキームであるが、著作権自体の価値を評価しているというよりは、対象となったアーティストに対する応援という要素が大きいと思われることから、以前本blogでご紹介した「新人グラビア☆アイドルファンド」とも共通する、人的資本に対するリアルオプションに近いものと考えられる。この種のファンドは、法的には比較的容易なスキームであり、悪くいえばいくらでも考えることができる。もともと情報の非対称性の高い領域であり、安易に考えれば「千三つ」のそしりを免れず、マーケット全体が信任を失ってしまうおそれもある。ライツバンク社の後藤社長は、雑誌「ビジスタ」2004年3月号のインタビューで、「ミュージックファンドはアーティストの良しあしは判断しません。あくまでアーティストに投資システムをレンタルするものです。」と語っているが、参入障壁がさほど高いとは思えないこの事業において同社が成長していくためには、やはり「目利き」及びアーティスト育成にかかるノウハウを蓄積していくことが必要ではないだろうか。能力がありながら発表の機会に恵まれないアーティストにとってはありがたいシステムである。第1号ファンドの成否、および第2号以降のファンドに期待したい。

ファンド投資家には、ライブのバックステージパス、レコーディング風景を撮影したメイキング DVD のプレゼント、特別ライブのご招待、オリジナルグッズなど、投資収益以外のメリットもあるとのこと。音楽好きの皆さん、好きなアーティストに投資してお金儲けしましょう!

|

« 13歳のハローワーク | Main | サーチファンド »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference ミュージックファンド:

« 13歳のハローワーク | Main | サーチファンド »