« 株式投資のための定量分析入門 | Main | 公開セミナー「マルチエージェントシステムの電力市場モデルへの応用-相対契約過程モデルを中心として」 »

アイドルファンドUPDATE 04/04/11

以前このblogでご紹介した「新人グラビア☆アイドルファンド」についての最新情報をご紹介する。㈱ジャパンデジタルコンテンツジェット証券(JDC)を通じて発売した同ファンドの投資対象となっているグラビアアイドル(「ファンドル」と呼ぶらしい)5人の写真集およびDVDが4月21日に発売されることとなった。

青山愛子EIREI神谷怜奈、島田早希、武市智子の5人を対象としたこのファンドは、匿名組合方式により、1口5万円×100口×5人分を募集し、全員が完売した(ジェット証券サイトを参照。ご興味のある方のために、画像はこちら)。投資家からの資金はそれぞれのアイドルの第1回写真集およびDVDの制作資金にあてられた。この写真集・DVDの販売状況により、第2弾、第3弾、第4弾までの写真集・DVD発売が計画されており、これらをあわせた収益が一定の算式に基づき投資家に対して還元されるしくみとなっている(スキームは重要事項説明書ご参照)。

このファンドの最も興味深い点は、売れ行きによって追加投資の有無が異なってくる点にあるが、JDCによると、これは主に①JDC側のリスク管理のためと、②各アイドルに対するインセンティブの効果を狙ったものであるという。すなわち、ファンドの資金は第1回写真集・DVDの資金のみに相当するため、第2回以降の投資はJDCのいわば「持ち出し」となる。したがって、リスクを最小化するため、売れ行きによって追加投資をキャンセルする逐次進行オプションを確保した、ということのようだ。一方JDCは、このファンドにより、最もリスキーな第1回の投資に関するリスクの多くを投資家に移転することができる。

もう1つ興味深い点は、このファンドが、ファンの「応援する気持ち」をスキーム上明確に位置づけている点だろう(重要事項説明書6ページ参照)。これを具体化するためか、JDCでは、4月10日に「投資家懇談会」なるものを開いて、投資家たちとアイドルを会わせるイベントを行ったりしている。取材したテレビ局の話では、投資家層は30代男性が多く、大半はこれまでに投資の経験があるが、必ずしもアイドル好きばかりというわけでもないらしい。スキームの面白さに惹かれた向きも少なくないようだ。

リアルオプションを考える際にいつも思うのだが、企業が自社の事業にリアルオプションを保有しているとして、その企業はなぜ同業の他社への投資をせずに自社で事業を営むのか、またはなぜ自社の事業リスクをオプションでヘッジしないのか。コーポレートファイナンス的にいえば、投資家がヘッジを望まないからだということになるだろう。しかしそれだけではないのではないか。企業(の経営者または従業員)は自社の事業に愛着と自信と誇りを持つがゆえに、リスクをあえて負うことをいとわず、むしろリスクを自らのインセンティブとしている部分があるのではないだろうか。これが将来の可能性を切り開くカギとなるのだと思う。アイドルファンドは、リアルオプションという考え方に内在する、教科書では触れられない、しかしおそらく最も大事な、リアルオプションの源泉を気づかせてくれる。

というわけで、5人のアイドルたちには、ぜひとも第2弾以降の商品が制作されるよう、がんばってもらいたい。このファンドは対象アイドル5人すべて完売したが、売れ行きの「早さ」には若干の差があったようだ。これが写真集・DVDの売れ行きと整合的であるとすれば、われわれはここで、市場の効率性に関する新たな実証結果を得ることになるだろう。

|

« 株式投資のための定量分析入門 | Main | 公開セミナー「マルチエージェントシステムの電力市場モデルへの応用-相対契約過程モデルを中心として」 »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference アイドルファンドUPDATE 04/04/11:

« 株式投資のための定量分析入門 | Main | 公開セミナー「マルチエージェントシステムの電力市場モデルへの応用-相対契約過程モデルを中心として」 »