アイドルファンドUPDATE04/06/28
6月15日、㈱ジャパン・デジタル・コンテンツ(JDC)は、ジェット証券㈱を通して販売した「新人グラビア☆アイドルファンド」の投資対象となっている各アイドルの写真集、DVDについて、5月31日現在の販売状況を発表した。
対象となった5人の各アイドルの写真集、DVDは、4月21日に発売された。5月末現在の販売状況は次のようになっている。
写真集 DVD
青山愛子 出荷 2,445 返品 586 差引売上 1,859冊 1,400枚
EIREI 出荷 2,472 返品 575 差引売上 1,897冊 1,291枚
神谷怜奈 出荷 2,422 返品 632 差引売上 1,790冊 1,287枚
島田早希 出荷 2,455 返品 610 差引売上 1,845冊 1,301枚
武市智子 出荷 2,418 返品 635 差引売上 1783冊 1,273枚
このファンドの匿名組合契約第4条第2項によれば、発売日から90日以内に1,000枚以上のDVD売上枚数と1,000冊の写真集売上冊数が達成できなければ、そのアイドルについては、第2弾のDVDおよび写真集の作成は行われないこととなっている。それに従えば、上記の通り、5人とも、写真集およびDVDの売上数はそれぞれ1,000を超えており、5人そろって次段階へ進むこととなるのだろう。
しかし今回、JDCは、販売状況の発表に際してこの足切り基準を改定し、DVD、写真集のいずれかの売上数が1,000を超えた場合には、超えた方について次段階の製作を行う、と発表した。つまり、DVDだけが1,000枚を超えればDVDのみ次段階の製作を行う、といった具合だ。
5人とも、写真集、DVD双方について基準を満たしているにもかかわらず基準を変更したのはなぜなのだろうか。以前紹介したアイドルファンドblogでは、写真集には返本があるため、90日経過時点で差引売上冊数が1,000冊を下回るおそれがあるのではないか、と分析しているようだ。確かに、DVDの売上枚数に比べて、写真集の差引売上冊数は妙に数字がそろっているようにもみえる。ひょっとすると、JDCにはもう見通しがついているのかもしれない。とすれば足切り基準の変更は、あらかじめ布石を打っておくという位置付けということになる。
日経新聞がこの種のファンドの特集を載せたとき(私もインタビューされた)、「応援ファンド」という名称を使っていた。うまいネーミングだと思う。ただリターンのみを追うのではなく、投資対象を支援したいとの動機をもち、投資に伴うリスクをも楽しみとする考え方だ。このアイドルファンドは典型的な応援ファンドであるから、投資家の多くはそのアイドルのファンなのだろう。とすれば、客観的な基準での単純な足切りは、必ずしも投資家の意に添わないものかもしれない。JDCは、そこを気にしたのだろう。
しかしこれは、本来投資家が負うべきリスクをJDCが肩代わりしていることにはならないか。客観的な足切り基準を決めたのであれば、ファンド運営者としては、それを守るのが筋ではないだろうか。投資家は個人的な理由でアイドルを応援するのだろうが、JDCはビジネスとしてこれを行っているはずだ。このようなことが当たり前になれば、投資家たちのリスクへの意識が薄れてしまうのではないか、と危惧する。それはこの種のファンドの発展や、健全な投資家の育成にとっても、必ずしもよいことではないと思う。
もちろん、投資家たちが、「このアイドルをもっと応援したい。資金は出すから」というなら話は別だ。応援ファンドであれば、ファンドの組成時に、次段階への「投資権」を条項として盛り込んでおくのも面白いのではないか。それはいってみれば、「成長オプション条項」とでもいうべきものだ。自分のリスクで、自分の資金を出し、納得したリスクをとってリターンをねらう。同時に、「投資する楽しみ」を得る。そういう投資スキーム、投資家、そして市場ができてくれば、日本のリスクマネー供給は、これまでにない厚みを持つこととなるのではないか。
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