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アニメファンド

㈱ジャパン・デジタル・コンテンツ(JDC)と、オンライン証券会社の楽天証券㈱ジェット証券㈱の3社は、共同で、日本初の個人投資家向けの「アニメファンド!」を組成し、2004年9月中旬(予定)から募集を開始すると発表した。


このファンドの投資対象は、講談社の人気漫画シリーズ『バジリスク 甲賀忍法帖』(原作:講談社文庫、山田風太郎作『甲賀忍法帖』/漫画:せがわまさき)を原作としたテレビ用アニメーション「バジリスク(仮称)」だ。ファンド総額は2億4,000万円を予定している。ファンドの組成はJDCが中心になって行い、アニメーション制作は「青の6号」や「戦闘妖精雪風」で知られる㈱ゴンゾが担当する。個人投資家を対象にした出資の募集は、楽天証券とジェット証券が行う。また、プロモーション活動については、楽天㈱をはじめ楽天グループが全面的に協力する。

このファンドのしくみは、簡単にいえば、匿名組合に権利主体となるSPCを組み合わせたものだ。今回のプロジェクト専用に設立されたSPC(㈲デジタル・アニメ・プロジェクト)が事業会社となり、JDCおよび㈱GDH(ゴンゾ・グループの持株会社)と個人投資家がSPCとの間で匿名組合契約を締結することにより出資を行う。単純な匿名組合方式をとらなかったのは、おそらく著作権等の権利ビジネスを展開するうえで、権利主体を匿名組合から切り離しておく必要があったためと考えられる。SPCはその資金をテレビ用アニメーション作品『バジリスク(仮称)』の制作費の一部に充てる。個人投資家には、同作品のDVD・ビデオの収益が優先的に分配され、最終的な投資利回りはそれらの売上に応じて変動するほか、DVD商品のエンディング・ロールに投資家の氏名が掲載される等の特典が用意されている。

つまり、出資された資金はテレビアニメーションの制作費用となるが、その回収はDVD・ビデオの販売収入からとなるわけだ。テレビでの番組放映は、それ自体が収益を稼ぐわけではない。制作会社が制作自体によって得る収入だけは制作費用をまかなえないので、DVDやビデオで回収するのが一般的なやり方となっている。その分をファンドであらかじめ調達する、という構図なのだろう。個人投資家は収益分配について優先されているが、その分利回りには上限がある。逆にJDCとGDHは分配において劣後する代わりに利回りは上限がない。1口5万円と小口に分割したことと併せて、本来リスクの高いアニメのキャッシュフローを一般個人投資家に販売するための配慮が感じられる。

原作の『バジリスク 甲賀忍法帖』は、コミックの累計販売実績が100万部を超えている人気漫画シリーズで、漫画雑誌「ヤングマガジンUPPERS」(講談社)で連載された作品だ。テレビ番組放映は2005年4月からの半年間(24話)を予定しており、第1弾のDVD・ビデオの発売時期は2005年7月頃を予定しているという。

JDCとジェット証券はこれまでにも2003年12月発売の「新人グラビア☆アイドルファンド」等、個人投資家向けファンドを組成・運用してきた。今度はコンテンツ産業の華ともいうべきアニメということになる。推移が注目される。

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Comments

日本のアニメ製作現場のために、こうしたお金の流れは育って欲しいです。
個人のお金が作品に直に供給されるとなると、一緒に改造版とか著作権への考え方も変わりそうです。

ところで、山口さんは温室効果ガスの排出量取引制度については、ご研究なさっていらっしゃいますか?
大変恐縮なのですが、もしよろしければ、これはビジネスチャンスとしてどの程度のものなのかといった所をお聞かせ願えますでしょうか。

Posted by: ミズタマのチチ | 2004.08.05 01:37 AM

コメントありがとうございます。アニメ産業は最近注目を集めていますが、業界の方々からみればまさに内憂外患、問題意識だらけです。資金調達の問題もその1つで、こうした試みが広まっていくといいなと思います。

排出権取引市場については詳しくありませんが、注目するように努めています。以下はあまり詳しくない、という前提でお読みください。

排出権取引市場は、日本でもいくつかの実験段階を経て、実際に動きはじめましたよね。潜在的なビジネスチャンスとしてはもちろん大きいと思います。世界レベルの取り組みですし。ただ、当初はやはりおっかなびっくりになるのではないでしょうか。また、すでにかなり多くの企業がなんらかのかたちで関与しているはずです。だからこそ制度をスタートできる状況が整ってきたわけで。ということは、新たに参入してどの程度の分け前に預かれるかは、未知数ではないでしょうか。ビジネスチャンスとは、「濡れ手で粟」という意味ではなく、「努力と才能と、幸運を備えた者に見返りが」という意味かと理解しています。市場ってそういうものですよね?

Posted by: 山口 浩 | 2004.08.05 11:39 AM

山口さん、こんにちは。

ご解説をいただきまして、ありがとうございます。
温室効果ガス排出枠をめぐる取引は、
ゆっくりながらも、大きなものになりつつあるのですね。

朝日新聞(8/4)の記事では、環境省が方針を発表したとの切り出しで、
「企業の温室効果ガス削減活動のインセンティブになるだろう」と
述べられておりましたが、それ以上のことが語られておりませんでした。
動きや影響は、それだけでは無いだろうなと感じられるものの、
対象の輪郭が上手くつかめない、奇妙な感覚がありました。

一方で、既に排出権ファンドなるものを売り出そうとしている会社もあり、
これから始まるようで、もう現実化しているようで、
実態はどうなんだろうと、思っておりました。

「だからこそ制度をスタートできる状況が整ってきた」という部分を拝読いたして、
小さな現実が沢山そろって、大きな号令がかかったんだと、ようやく理解できました。

とても恐れ多かったのですが、思い切ってお話を伺ってよかったです。
すっきりしたのと同時に、新たに興味が沸いてきます。

繰り返しになりますが、お応えいただいて本当に有難うございました。

Posted by: ミズタマのチチ | 2004.08.05 05:26 PM

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